(ダイヤモンド・オンライン-2017/01/24)
社会経験がない中で、就活生がアピールできる経験といえば何でしょうか。スポーツで全国レベルの実績を叩き出すことや、難関大学の卒業見込み、在学中の起業による実績や研修学問での実績などが挙げられます。
しかし、こういった限られた数%に入っていなくても就職活動でアピールできる身近なアルバイトがあります。それだけではありません。実際に社会生活を送る中でも活躍できる社員としての材料となります。そのアルバイトとは居酒屋バイトです。
なぜ居酒屋バイトが有利となるのかを考えていきたいと思います。
特別優秀な成績をおさめているわけではない一般的な学生が就職活動で有利になるためには、やはり外せないのがコミュニケーション能力とメンタル面の強さです。特にメンタル面が弱かったり、自分に対して無価値観を大きく抱いていたりすると、挑戦する行動量自体が減ってしまうからです。そして、そういった力を身につけるのにうってつけのアルバイトが居酒屋アルバイトなのです。
とはいえ、「居酒屋アルバイト」をしていたと宣言すれば、書類通過率や面接合格率が高まるかというとそうではありません。
就職みらい研究所(株式会社リクルートキャリア)による「就職白書2016」の中で、「企業が採用基準で重視する項目」があります。全国の新卒採用を実施している企業1260社が回答した最も高い項目が「人柄」(93.0%)でした。その後、「自社・その企業への熱意」(79.0%)「今後の可能性」(68.4%)と続きますが、「アルバイト経験」と答えたのは22.0%に止まります。「学科・学部/研究科」(24.7%)よりも低く、これだけを見るとアルバイトよりも研究・ゼミ活動に力を注いだ方が良さそうにも見えてしまいます。
しかし、企業が重視する「人柄」「熱意」「今後の可能性」を身につけることができる手段こそが、居酒屋バイトなのです。だからこそ、私は居酒屋バイトをお勧めするのです。
居酒屋にも様々な規模や業態がありますが、今回は個人経営をしている居酒屋を想定して考えていきましょう。店が小規模であればあるほど、従業員も少人数体制となっていきます。それは多くのお店でも共通していることでしょう。
最も重要なポイントは、酔っ払っているお客を相手としていることです。普段は大人しい人柄でも、お酒が入り酔っ払うことで人格が変わる人は決して珍しくありません。
ふとしたキッカケでクレーマーとなり、店員には様々な要望が降りかかってきます。クレームも、論理的に話を詰めてくるお客もいれば、ただ感情をぶつけてくるお客もいます。
この、ある種正常な状態ではない相手に対応をしていく際は、ただ論理的に説明するだけでは納得してもらえません。そういった対応をしていくことで、簡単にキレずに、相手の求めている要素を把握しようとする力がついていきます。そういう理不尽なクレームの中でも、経験を積み円滑に対応できるようになっている頃には、自信が人柄となって所作や表情に溢れてくるようになります。個人経営の居酒屋では年齢層が高めだったり、常連が多かったりと、年上とも構えすぎずに会話ができるようになるのも強みです。
通常、学生の面接対策をしている中でよく不安点として聞くのが「年齢の高い人と話した経験があまりない」「偉い人と話すのが怖い」というものです。そういった点で見ると、相手の年齢が高くとも役職が高くとも、話す機会が増えたり、酔った姿を見たりすることで、学生はある種ニュートラルに近い感覚で接することができるのでしょう。
特に感じの良い女子学生の中には、居酒屋や個人の食堂で働いていた人が少なくありません。彼女たちには、年上に対しても全く物怖じしない独特の雰囲気を感じないでしょうか。
酔っ払った時に起きやすいのはクレームだけではありません。お客の気が大きくなっているため、大げさに褒めて貰えたり、店員として可愛がってもらえたりする側面もあります。飲み物の残量に気を配ったり、オススメのメニューを紹介したりするだけでなく、飲み物をこぼした時の素早い対応など、自分で判断して実行したことを承認されることで自信がついていきます。
こうした人間関係の中での成功体験は、主体性と発信力を伸ばしていきます。また、トライ・アンド・エラーを「失敗を恐れず」に実践していくことは自身と店舗の可能性を伸ばすことに繋がります。当然、就活の際にはこの試行錯誤と結果のエピソードを企業にアプローチしていくことで、「今後の可能性」をイメージしてもらえる可能性も高まっていきます。
居酒屋といえば活気ある場所なので、活気ある接客も重要です。ボソボソと喋っていては相手に何も伝わりません。そもそも相手は酔っ払っているのです。元気よく「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」を発声できるかが重要です。そして熱意とは感情が伴ってこそ相手に伝わっていくものです。普段から感情を出していない話し方をしている場合、面接だからといって急に120%の力が出せるものではありません。元気な接客を日常的に続けていることで、ここ一番で感情を出すことができるのです。
また、アルバイトとはいえ賃金をもらっている仕事です。熱意や元気を履き違えていれば注意もされるでしょう。例えば繁忙期にピリピリしている厨房で大きな声を出すなどしていれば、聞いている側にもその感情は伝わってしまいます。つまり、自分がどう見られているか、どういう風に見られたいかというフィードバックの機会があるのが居酒屋バイトの特徴なのです。
もちろん、居酒屋以外のアルバイトでも前述のような働き方をできる環境があれば力はついていくでしょう。ですが、あくまで企業が重視するのは「アルバイト経験」という項目ではなく、将来的にどう活躍していきそうかという部分です。
一概にアルバイトをしなさい、インターンシップに行きなさい、就活イベントに参加しなさいというのではなく、どんな体験を通じて、どんな考え方をしてきたかに焦点を当てていくことで、可能性を広げていけるのではないでしょうか。
私がこれまで関わってきた内定多数の就活生と話をすると、居酒屋バイトをはじめとする苦しい、理不尽な経験をした上で、それを克服している学生が多いことから、そのように感じました。
週刊ダイヤモンド
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